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過剰債務問題と租税債務
〜将来展望・事業再生手段・支払緊急度に応じた債務対応〜 
2012年1月10日

 動向が注目された金融円滑化法の再延長措置の有無ですが、結果として、大方の予想に反して(?)再延長されることが昨年末決まりました。
中小企業金融円滑化法の期限の最終延長等について(金融担当大臣談話:金融庁)

 談話の要旨として、
・金融機関によるコンサルティング機能をより強化して、中小企業者等は経営改善の達成を強く求められているということ。
・再延長は今回で最後
ということです。
 今回の趣旨から、少なくとも金融機関側の対応としてこれまで多く見られた「リスケ申請→承認→その後放置」 といった甘い対応は、談話の指針からは難しいものとなります。
 また、元々、円滑化法適用の対象企業は、「経営改善見込みが高い」ことが前提であり、取組意欲が低く、改善に繋がる方策がない会社は法の適用外となるわけで、今後の条件変更に応じてもらえる保証はどこにもないと言えます。
 これまでどおり、リスケによる業績建て直し途上にある会社では、経営改善の実績を出すことが金融機関からの支援継続を受けるための唯一無二の手段であって、この点においては何ら変りがありません。

【過剰債務と税金滞納】
 現在、業績が思わしくない企業においては、過剰債務を抱えているところが少なくありません。
 ひとえに過剰債務と言ってもその中身は、金融機関からの借入は勿論、税金や社会保険の滞納、買掛金、リースの支払、知人からの借入、・・・。
 当事務所へ相談される方においても、その内訳は実に様々です。
 その中で、税金滞納者に対する税務署からの厳しい取立てに苦悩する会社が、差し押さえなど強硬な手段を受けることで、当事務所へのご相談される方が以前に比べて増えている気がします。
 ここでテーマとして、過剰債務企業において租税債務が金融機関を始めとしたその他の債務を含む債務全体の中でどんな位置付けで、それに対して、どう向き合っていけばよいかという点を取り上げてみます。
 仮に将来、法的手段等を使って債務圧縮策を行った場合に、租税債務はどのように扱われるでしょうか?
@破産の場合
 個人事業の場合、免責なし。(延滞があれば延滞税も加算される。)法人の場合は、原則的にその債務を個人が引き継ぐことはありません。
A民事再生の場合
 法人・個人とも、債権カットの対象である再生債権ではなく、一般優先債権として免責されることはなく、返済期間に応じての返済が求められます。
B会社分割の場合
 (国税通則法第9条の2 法人の分割に係る連帯納付の責任)
 法人が分割をした場合には、当該分割により事業を承継した法人は、当該分割をした法人の次に掲げる国税について、連帯納付の責めに任ずる。ただし、当該分割をした法人から承継した財産の価額を限度とする。
一 分割の日前に納税義務の成立した国税
・・・・
 ここ数年、過剰債務企業の再生手法として活発に利用されている会社分割ですが、別法人になっても税金納付の責任は免れませんよ、ということです。

 上記からもわかるとおり、近い将来、破産させて会社経営を終わらせると考えてる場合はともかく、これから再起したいという場合、租税に関する債務はどこまでも背負うことになります。さらに遅れると延滞税という商工ローン並みの債務が加算され、その額は雪だるま式に増えてしまいます。
 一方、その他の債務についての債務カットの可能性については、
@金融債務
 多くの企業で、金額的には一番多い金融債務は、一般の金融機関の場合、会社分割の活用や金融機関との交渉如何で債務カットという道があり、最近ではまったく珍しいことではありません。もちろん、ここで言うカットの対象とは無担保債権となる部分であって、担保付き融資の場合、例え法的手続きをとってもカットの対象にはなりません。
 金融機関の事情や債務処理方法を理解し、それに見合った行動を取ることで、金融機関への借入金の返済のために、高利の商工ローンや消費者金融などからさらに借入をして、結果的に資金繰り破綻を来たすといった悲劇を招くことはありません。
 商工ローンにおいては、法的手続きにより債務カットは可能です。
A一般債務(買掛債務)
 仕入先の買掛債務は事業の継続性を考えると、支払優先順位は高い債務ですが、民事再生等、法的再生の場合、債務カット自体はできる可能性はあります。 
B賃金債務
 社員に対する未払い賃金は、倒産時には他の債務より支払が優先され(破産時には租税債務と同じ優先破産債権)、基本的に債務カットの対象にはなりません。

 最近では税金滞納により、売掛金を差し押さえて来るケースも珍しくなく、この場合、事業継続が一気に苦境に追い込まれます。延滞者への取扱いは、金融機関などと比較してもかなり強硬なものがあります。税金滞納は公に対する債務だから、いざとなれば免除されるだろうという安易で誤った認識を持ってる人が多いのかもしれませんが、決してそんなことはありません。

過剰債務状態での返済順位の考え方
 膨らんだ債務返済に対する考え方として、事業の継続を視野に入れた場合、通常、取引先からの買掛債務、従業員の給料などは、租税債務の支払より優先度が高いことに異論はないでしょう。
 ただし、将来展望、再生手段、租税債務の金額、債権者の理解・姿勢など踏まえ、時として、会社の置かれている状況に併せて支払順序を決めてゆく弾力的な対応も求められます。
 ちなみに昨年末、当事務所への相談者で、消費税を始めとした税金滞納により預貯金を差し押さえられ、対応に苦慮される方からのご相談がありました。詳しく話を聞いてみると、何度か督促はあったものの甘く考えて支払を止めていたところ、突然、強硬な措置を受けたとのことでした。債務額は延滞額も含め年商ほど膨らんでおり、延滞期間中は金融機関を始めとした他の債務を優先的に支払われていたとのことで、支払順位を見誤ったケースでした。
 税金の延滞分については、現状の収支に見合った分割納付計画を作成し提出することとし、現在、協議中となっています。
 この方の場合、現状の返済能力に比べてあまりにも債務が膨らんでしまい、再起するのか廃業するかの判断を付きかねている状況ですが、今後、法的手段によりその他の債務は一定額カットできたとしても、個人事業主ということもあり、膨大に抱えた租税債務は一切カットされることなく一生付き合わなければなりません。

 ここでご紹介したケースに限らず、過剰債務に苦しんでいる方で、膨らんだ債務の処理にあたって、こうした将来の出口戦略を見据えて合理的に対応している方というのが意外なほど少ないと感じます。
 知識・認識がないことで、本来、事業再生ができるような場合でも、誤った方向に進んでその機会を見過ごしてしまい、気付いた時には手遅れといった悲劇が繰り返されています。
 現在、資金繰りが厳しい会社では、特に今後、会社再生を前提に考えている場合、再生手段の基本的なスキームの理解と現状抱える債務解消に向けた的確な方針を立てることが極めて重要で、このことが時として今後の会社再生の鍵となります。  

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