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返済猶予(リスケ)中の業績改善・事業再生に向けた取組みについて
〜延長期限迫る金融円滑化法への対応〜 
2011年12月15日

 早いもので、中小企業の資金繰り対策としての「金融円滑化法(平成21年12月4日)施行」(当初期限平成23年3月末の1年延長)の延長期限があと3ヶ月あまりと迫っています。
 元々、金融機関が返済期限の延長や金利の減免など条件変更に応じる要件は
■条件変更時に原則、経営改善計画書を提出、提出されない場合においても1年以内に作成する見込みがあること。
※条件変更を行なっても不良債権にならないための要件にもなっている(改訂金融検査マニュアル)
■申請時に経営改善計画書の提出がなされない場合、@資産売却による財務内容の健全化A経費の削減(3)売上向上に繋がる新商品開発C販売チャネルの拡大による売上向上、などが見込めることを金融機関が確認できる。
など、条件変更期間内で経営改善が見込める案件を対象とするものですが、現実にはそのハードルは低く、申請した会社の多くに適用されました。

【リスケの実施も赤字が解消しなければ何も解決できない現状】
 制度上、条件変更(リスケ)を行った企業に対しても必要に応じて、新規融資を行うとされてましたが、統計を取ったわけではないですが、例外的なケースを除き、通常の発生する資金ニーズで融資が実行された話など殆ど聞かれません。
 したがって、リスケ実施後、金融機関への約定返済猶予されている企業では、業績回復のための手を打ちたくても、そのための資金が不足して対策が行えないといった会社も多く見受けられました。
 リスケをしてる会社の殆どが赤字企業であり、その状態が続いている限り、いくら金融機関への返済をストップさせたところで、いずれまた資金が不足するのはごく当たり前のことです。
 円滑化法による借入金の返済猶予後に倒産した企業が今年10月には22件と、過去最高になっています。(帝国データバンク) これには、自主廃業企業は含まれておらず、スケ後も資金繰りに苦しむ中小企業の厳しい実態が見てとれます。
 前述の通り、リスケを受けている企業は、本来のリスケの承認要件である業績改善見込みの有無を棚上げして承認されたのが実態で、リスケ後も多くの企業で業績低迷が続いている状態が想定されます。

【金融円滑化法の再延長措置は?】
 金融円滑化法の再延長の見通しですが、@すでに一度延長済みであること、A多くの企業で延長時に再申請された経緯があり、業績回復に向けての時間的猶予は十分に取ったと思われること、B競争力のない企業をいつまでも延命させることは逆に公正な市場競争を阻害するとの批判の声もあり、現状では再延長措置は厳しい状況にあります。

【返済猶予を受けてる企業に対する今後の金融機関の対応について】
 金融円滑化法は資金繰り難の先延ばしを助長するものではなく、返済猶予という手段を利用して、その間での業績回復・経営改善を促すための法律です。
 来年の3月末をもって金融円滑化法の適用が終了した場合、法律による努力義務がなくなることで、原則、金融機関の独自判断による取扱いとなります。
 この場合、その時点において業績回復に向けての取組みが順調であり、業績回復基調にある企業に対しては、リスケ延長や新規融資等、引き続き金融支援が行われることが想定される一方、業績回復への改善取り組み実績が全くなく、その後の業績回復の兆しが見いだせない企業などは、リスケ前の約定にもとづく返済が求められることも予想され、この場合これに応じられない場合、期限の利益の喪失扱い(※)により、金融機関側から厳しい対応を迫られることも想定されます。

【※期限の利益の喪失した場合の金融機関の取るべき措置】
■借入金・残債の一括返済 等

担保提供(不動産等)している場合→任意売却の要求、もしくは競売をかける。
 担保物件が事業用の不動産で移転等で代替できない工場などであれば、売却後も物件を引き続き使用できる様、親族などからのリースバックについて検討する必要があります。
 一般的に任意売却の方が競売よりも高い値段で売却でき、返済金額も多くなることから、金融機関の利害や売却見込みなどを考慮のうえ、任意売却か競売かの選択がなされます。
 任意売却や競売の後、無担保の残債がある場合の多くは、残債はサービサーに売却されます。(担保付で売却される場合もあります。)
 この場合、第三者の連帯保証人や物上保証人がいる場合は、その影響と対応について検討しておかなければいけません。
保証協会付の借入は代位弁済になり、その後は保証協会サービサーとの交渉となる。
 保証協会付融資の返済が滞り、協会より金融機関に代位弁済されると、その後の交渉は協会に移りますが、交渉窓口はあまり聞きなれないと思いますが保証協会サービサーというところになります。
 保証協会サービサーは一般のサービサーとは全く異なり、協会から債権を買い取っているわけでなく、協会の回収専門部署のような位置付けで、多くがその会社に体力に見合った返済可能な金額による返済に応じてくれることが多く、私の親族でも過去にありましたが、担保物件があっても協議結果で示された返済を真面目に続けていれば、競売など強硬な措置を取ることはあまりありません。返済は長期の分割返済なることが多いようです。
 原則的(※)にはこの保証協会への債務を解消するまでの間、信用保証協会付きの融資は受けることができず、この間、会社は金融機関からの借入に頼れない厳しい資金繰りを強いられることになります。

※返済が順調に進むことで「求償権消滅保証」により融資を受けて債務解消→新たに保証協会付融資が実行されることもあります。これは平成18年に新たに設置されたスキームで、経営改善計画(再生計画)の策定・提出が前提となります。

 上記、「期限の利益の喪失」時における取扱いに対する対応の詳細につきましては、企業ごとの個別の事情により様々なものとなりますので、ここでは割愛いたします。

【返済猶予を受けてる会社が現状で早急に実施すべき取り組みは?】
  前述の通り、現在、返済猶予を受けていても、現状厳しい資金繰りに迫られている会社は多いと思います。実際に当事務所にもリスケしている企業からの相談で、「税金滞納し差し押さえられた」「仕入れ先への支払が迫ってるが資金がない」などのご相談が頻繁にあります。
 こうした中、金融円滑化法の期限が迫ってきている現在、何としても業績回復に向けた足掛かりを掴み、今後の業績回復に対する金融機関の理解を得たいものですが、資金調達手段に限りのあるリスケ中の企業が採れる行動にはかなりの成約が伴います。例えば現有商品のる売上拡大を図るため、安易な単なる値下げ行為などは粗利の減少に加え、仕入れや在庫の増大に伴う一層の資金繰りの悪化を招きかねません。また、一度値下げを行うとその後、元の価格での販売が困難になるケースもあり、利益率が悪化する悪循環に陥ります。
 この場合、採るべき措置はキャッシュフロー改善がより高く見込まれるものであり、また資本の回転率が上がり経営効率の向上が図れる取組みです。資金調達に成約のあるリスケ中の企業では、目先の売上の向上ではなく利益額の増加に絞って取り組むべきで、 具体的には「実効性の高い経費削減の取組み」、「部門別損益分析による現状分析と事業再構築」の二つをご提案します。

1.実効性の高い経費削減の取組み
 会社の経費には変動費と固定費がありますが、会社が単独で取組むことができ、効果に即効性のあるのが固定費削減です。
@社内全体への経費削減意識の浸透
 私がサラリーマン時代にもありましたが、会社で経費削減に取り組む時、会社から一方的に「○○代は15%、△△費は20%削減」といった感じで指示されるケースが見られます。経費の削減自体、社員にとって決して楽しい取組みではなく、会社全体に意識を浸透させるためにはまず、経費削減に取り組む背景や理由はもちろん、現状を放置することがいかに会社にとって危険であるのかを明確に伝える必要があります。(必要に応じて数値的な根拠も示す。)
 さらには、動機付けのため、例えば小規模な会社であれば全員参加のミィーティングで具体的なアイディアを社員から募り、プロジェクトに対する責任感を持たせる取組みも有効です。
 また、社員の経費削減への取組み効果を数値化し、成績優秀者に対しインセンティブを与えるなどすることで、取組みへの意欲を持続させる工夫も大切になります。
 社内全体でのコスト削減への取組みが継続・浸透することで、利益に対する意識が高まり、事業の生産性向上に向けた低収益企業脱却の足掛かりになります。

A経営者自身の経費削減への取組みが支持されること
 経費削減に限ったことではありませんが、会社全体としての方針を定める以上、目に見える形で経営者自身の姿勢を示す必要があろうかと思います。そうすることで、「社長があれだけの覚悟で取り組んでいるんだから。」という社員からの共感が生まれ、目標に向かって会社は一体化します。
 経営者が係わる経費の中で無駄なものが多いものの一つが接待交際費です。経営者であれば、例えば様々な経営者会にされてる方も多いかと思います。参加することでの気分転換や人脈拡大などの有益面はあるものの、夜の会合などのウェートが高く会社の業績回復ということを考えれば直接貢献するようなものなど殆どないでしょう。こういう会合に出席するため頻繁に会社を留守にしているようなら、その会社の社員さんに内心で、「何だ、こんなに会社が苦しい時にまた飲み会か」などと思われかねません。
 業績回復という大命題を抱えている立場では、酷な言い方になりますが人脈拡大や教養の習得などに割いてる時間などはないでしょうから、きっぱりと退会すべきです。費用だけの問題ではなく、一刻を争う状況の中で、意義の低い会合に費やす時間自体が勿体無いと思えるようにならなければいけません。
 当事務所にも業績低迷で資金繰りが厳しくなった経営者の方からのご相談でも、お話を伺うと、会社の建て直しに対して本気度という点で疑問に感じる方が少なくありません。会社の業績建て直しが急務な経営者の方は、周りからの協力を得るためにも是非、強い決意と姿勢で取り組んで貰いたいものです。

B無駄な広告宣伝費の洗い出し
 固定費の中には、広告宣伝費など売上に直接影響する科目がありますが、この場合、費用対効果を検証し、複数の手段を使っているケースなどでは、効果が小さいものは直ちに辞めるか、もしくは効果の高い手段への振り替えを検討してください。

2.部門別損益分析による現状分析と事業再構築
@部門別損益の検証による重点部門の洗い出し
 会社では通常、複数の事業部門を持ち、各事業には日々様々な資金が出入りし事業が運営されています。
 ところが、零細企業も含めた中小企業と呼ばれる会社の中に、日々、会社の中で当たり前のように動いている資金の流れについて、明確な方針を持って主体的に動かしている会社はどのくらいあるでしょうか?
 効果がないマンネリ広告宣伝や、低付加価値で競争力のない商品の安易な安売り販売による営業赤字の拡大など、倒産した会社の報告例でもこうしたケースは枚挙にいとまがりません。
 現在、業績が低迷している会社の場合においても、先ずは自社の個々の事業の生産性、業績はどうなっているかについての認識を持ち、そこで、結果に対する原因分析と対策を立てることが業績改善に向けての第ー歩となります。
 そのためには、部門別(事業別・エリア別・顧客別)にそれぞれの損益を把握することで、会社の現状の問題点、今後の採るべき方策などを明確にすることができます。
 理解を深めるため、ここで、F企業における事業別の損益の分析を例に今後の事業展開の進むべき道について、検証してみます。

        F会社における事業別損益  単位:百万円
 事業A  事業B  事業C  合 計
売上高 160 100 90 350
変動費 105 60 60 225
限界利益 55 40 30 125
固定費 50 25 45 120
営業利益 5 15 △15 5
 

 F社(食品製造)における主力事業は、現在A〜Cの3事業があります。事業Aは創業以来続く主力事業で、その後、事業Bから事業Cへと順次、多角化を図ってきました。会社全体として営業利益ベースで黒字となっているものの、本社家屋・工場の改修等、過去のな設備投資に伴う返済負担(借入残高250百円)が大きく、経常利益ベースで赤字となり、現在、金融機関からの条件変更(リスケ)を受け、経営再建に向けて取り組んでいます。
 各事業の利益分析を行う際、その指標として限界利益を用いると、今後の収支計画を立てる際に様々な活用が図れます。(損益分岐点の分析、目標利益に対する必要売上高の算出 等)
 費用を変動費と固定費に分ける必要がありますが、区分は業種や会社によって様々なので、この作業が少々面倒ですが、簡便的に中小企業庁が公表してい区分など利用する方法もあります。
 限界利益とは、売上から変動費(売上の増減に伴い変動する費用)を除いたもので、粗利益と混同しやすいですが、粗利益と異なる点は、粗利益では控除されない一般管理費中の変動費科目も含まれます。代表的なもので、仕入原価、材料費、外注加工費、配送費などがあります。
 一方、固定費とは売上高の変動に係わらず決まって発生する費用で、人件費や水道光熱費、地代・家賃などが該当します。固定費には各事業に共通して計上されるの固定費があり、これを配賦する必要がありますが、費やした時間など、ルールを決めた上で割り振ります。

AF社の部門別損益の検証と今後の方策
●A事業(製造業)においては、F社では主力事業として捉えてきたものの、近年、業界間の競争が激化し、売上の維持に注力したものの、得意先からの値下げ要請などもあって、想定していたほどの利益(営業利益)を挙げられていないことがわかりました。無理な販売促策が裏目に出て、粗利益率低下(変動比率上昇)により、逆に会社の業績の足枷になってることが判明しました。今後は独自性を高めることによる付加価値の向上を図ることで、利益率の改善を目指すこととしました。

●B事業については、個人向け商品として7年前に事業を立ち上げたもので、販売手段としては専らネット販売が中心です。購入者からの口コミも多く、広告宣伝費はネットの運営費ぐらいであり、販売促進に携わる専属の営業社員もいないことから、利益率も高く、F社にとって利益貢献度が最も高いことが判明しました。今後は、広告宣伝が不要であるリピーターの拡大策を中心に販促を行うことで、利益率維持した上での一層の売上拡大を目指します。

●C事業は、F社の新規事業として3年前に立ち上げ新商品を立ち上げたもので、これまで新規の営業部員の採用や積極的な商品説明会などを実施して来ましたが、震災の影響もあり、売上高は当初予想の6割に程度に留まり、結果的に今期は赤字を計上してしまいました。月別の売上でも減少傾向が続いており、事業の撤退を視野にに入れつつ、固定費および変動比率削減策を早期に検討、利益率の改善に取り組むものとしています。

 以上、部門別損益分析について例を使って簡単にご説明しましたが、業績の悪い会社の多くは、社内における資金の流れを把握していないことが多く、部門別損益管理をやっていないと、そもそもどの事業部門が赤字であるかなどに気づかないため、効果的な対策あったとしても見過ごし、無駄にお金を垂れ流していることが少なくありません。(いわゆる「どんぶり勘定」と呼ばれる経営)
 部門別損益管理を検証し対策を打つことで、会社にとって望ましい指針を示してくれることになります。
 本例の事業別分析のみならず、事業所別、顧客別といった切り口での損益分析を併せて行うことでより精度の高い分析も可能で、会社の弱点、方針がより明確になりますで是非、取り組んでみてください。 

 現在、業績改善が進んでいない企業様に置かれましては、冒頭でお話した金融機関からの支援を継続実施してもらう必要性も含め、とにかく一刻も早く改善に向けた取組みに着手し、現在の取引金融機関に対し、これら会社の事業分析を結果にもとづく今後の改善計画、実施状況、将来の収支見通しについて自信を持ってアピールし、業績回復・事業再生に向けたスタートを切っていただければと思います。

【現在、リスケ中で資金繰りが厳しい場合の資金調達手段】
 現在、リスケ中であり一日でも早く経営改善に取り組みたいものの、金融機関からの借入は望みが薄いことで、当面の資金繰りが厳しく、何とか現況を乗り切りことに苦心されている方もいらっしゃるかと思います。実際にこのようなご相談も多く、この場合、以下の方策も有効なので検討してみてください。
@売掛債権担保融資
 リスケ中の資金調達手段として動産担保融資(ABL)の一つである、売掛債権担保融資があります。動産担保融資は家畜などを担保にした融資の実行などでも一時話題にもなりましたが、売掛債権担保融資に関しては、最近ではノンバンクでも取り扱うところが増えており、赤字会社でも利用することが出来ます。ただし、短期の借入となりますので、利用後の資金繰りも考慮に入れる必要があります。

Aファクタリングサービス
 売掛債権を買い取るファクタリングサービスを活用する手もあります。ファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、割引料等を引いた資金を受け取るもので、売掛債権の早期資金化が図れます。 こちらも、診療・介護報酬債権を対象とするものを中心に、最近は様々なサービス会社が取扱っており、私の知り合いの経営者の方もファクタリングサービスを有効に利用しています。
 売上債権先が決済期日に支払不能となった時に、依頼企業とファクタリング会社のどちらが負担するのかは取り決めにより異なり、取引の際、販売先には債権譲渡通知(承諾書)されます。

 事業再生は時間との勝負です。リスケによる返済負担を軽減され余力がある期間中に、いかに再生に向けての足掛かりを掴み成果の芽を出せるかが、その会社の将来を決めるともいえます。
 また、事業再生の取組みでは複雑に絡み合った諸問題に対応していかねばならず、例外なく大きなエネルギーを必要とするでしょうが、決して急場凌ぎのため高利なローン利用などに走ることなく、債権者からの協力を上手に引き出し、再生を実現させてください。

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